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2022.11.07

相続全般

借金や保証債務を相続しないためには

亡くなった方が残した借金や、生前に知人の多額の借金の保証人となっていた場合の保証債務は、法定相続分に応じて当然に各相続人に承継されるため、誰が借金や保証債務を相続するのか?といった遺産分割協議の対象とはなりません。

どういうことかといいますと、夫・妻・子2人という家族において、夫が亡くなって相続が発生したとします。相続財産は、自宅不動産(土地及び建物)・預貯金300万円・借入金120万円といったケースにおいて、夫が遺言書を残していない場合には、妻と子2人の計3名で相続財産をどのようにして分けるのかを話し合います。(遺産分割協議)

この遺産分割協議において、自宅不動産は妻名義にして、預貯金は相続人3名で各100万円ずつ相続することとしても全く問題ありませんが、マイナスの財産である借入金120万円については、先述のとおり相続と同時に法定相続分に応じて当然に各相続人に承継されますので、このケースでは、妻が60万円、子が各30万円の債務を相続することになります。

遺産分割協議で妻が借入債務を全部引き継ぐと決めたとしても、それは相続人間の内部の約束事にすぎず、子が債権者である金融機関に対して「ぼくは債務を相続していない!」と主張することはできないことになります。また、保証債務も同様に、相続と同時に法定相続分に従って当然に各相続人に承継されますので、遺産分割の対象とはならないとされています。

もっとも、このような法定相続分による承継の取扱いが、常に相続人側の意思に合致するわけではありません。例えば、亡くなった方が事業を営んでいた場合に、親の事業を引き継がない相続人も事業上の債務を引き継がなければいけないのは、相続人間の意思に反することが多いと思われます。また、債権者の側でも、相続人の一部に資力のない者がいる場合には、それだけ回収可能性が乏しくなることになりますので、このような法定相続分による債務の承継の取扱いが常に債権者の意思に合致するわけではありません。したがって、実務では、相続人と債権者が別途協議の上、借入金や保証債務を承継する者を決定して再契約(債務引受契約など)する事例が多くみられますが、これはあくまで相続後の「別の契約」であるということを念頭に考える必要があります。

以上のとおり、原則として相続人は亡くなった方の借入金(借金)や保証債務を当然に引き継いでしまうことになるため、これを避けるためには別途法的な手続を採る必要がありますが、今回は「相続放棄」を重点に解説いたします。

 

相続放棄とは、相続の開始を知ってから3か月以内に、家庭裁判所に対して、相続しない旨を申述する(申述書という書類を提出する)ことで、申述した者が「初めから相続人とならなかったものとみなされる」という法制度です。つまり、先のケースにおいて、妻が相続放棄をした場合、初めから相続人は子2人のみだったということになります。この申出は、それぞれの相続人が各自で行えばよく、相続人全員で申し出る必要はありません。

相続によって、相続人は亡くなった方が有していたプラスの財産もマイナスの財産もすべて含めて相続します。マイナスの財産がプラスの財産よりも多い場合(債務超過)など、そのまま相続してしまうと相続人にとって酷な結果となる場合もありますので、相続放棄の趣旨は、相続債務から相続人を解放することにあります。相続放棄により、マイナスの財産を相続することはなくなりますが、勿論プラスの財産も相続することは出来なくなります。(初めから相続人ではなかったことになるので。)

相続開始後3か月以内であれば、相続放棄の手続きはさほど難しくはありませんが、相続開始後3か月を経過しているケースや、相続財産の把握に時間が掛かり、3か月以内に相続放棄をするかどうか決められない場合などでは他の手続きが必要となりますので、司法書士など専門家にご相談いただく方が無難です。

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